5月は、私の周囲の人の誕生日が重なっている。
つい先程、誕生日おめでとう、と電話をかけた祖父は、85歳になったと言う。
昨日も、おめでとう、とまた違う人に電話をかけた。
誕生を祝福される人もいれば、死去を惜しまれる人もいる。
思い返すと、bloodthirsty butchersの吉村さんとの接点はそう多くなかった。
知らせを受けてからの数日は、四年前のことをよく思い出していた。
ちょうどドラムを探していた四年前、私は本間さんに小松さんを紹介して頂く話になっていた。
まだ小松さんに会ったことはなく、とりあえず連絡を取り合ってみようという頃、井の頭公園の横にあった、今はもう取り壊された伊勢屋に、本間さんと他の方数人で行った。
少し経ってから、吉村さんとひさ子さんと息子さんがいらっしゃる。お会いするのは初めて。
かねがね色々なお話を伺っていた吉村さん、大好きなNUMBER GIRLのひさ子さんが目の前にいることに、私はかなりうろたえ、ぎこちない態度だったように思う。
本間さんが、私がドラムを探していることを吉村さん達に話し、それで小松さんを紹介しようと思っているんですよ、と続けた。
すると吉村さんは、眉間に皺を寄せながらグラスを置き、「あいつはだめだ」とテーブルを見ながら言った。
私はいびつな笑顔を作りつつ震え上がり、トイレに立った。
男子便器で男性が用を足しているのを見ないようにし、その奥にある女子トイレの扉を開けた。
どういう意味のだめだ、なんだろうと思いながら、携帯を見ると、小松さんから初めての電話の着信が残っていた。
暑い8月のいつかの日だった。
結局、小松さんにドラムをやってもらうことになる。それから吉村さんの姿を目にする度、何だか気まずさを覚えていた。
どうとも思っていないかもしれないけれど、もしかしたら良くない感情をもたれているのではないだろうか、と小心者の私は気にしていたのである。
本当の所、どうだったのか。
伊勢屋でお会いした以降、ちゃんとお話する機会がなかったので分からずじまいだ。
長々書いてしまったが、少ししか関わりのなかった私が、知らせを受けてからずっと頭が麻痺しているので、皆さんが心配でならない。
小松さん、射守矢さん、ひさ子さん、その周りの方々。
神様ってやっぱりいないのだと思う。
手帳に新たな悲しい記念日が記入されてしまった。