世の中、自分の物差しだけで測れないものがたくさんあるんだな、と実感した夜更け。
「昔、飼っていたかどうか分からないけど、猫のお世話をしませんでしたか?」
と言われて、一瞬で記憶が蘇った。

小学校5年生位の時だっただろうか。
家にいると、軒下から猫の鳴き声がする。
覗いてみると、猫が一匹いた。
牛乳を与えると、猫は飲んだ。
その日の晩、勇気を振り絞って親に言ってみる。
「猫を飼ってはだめか」と。
予想はしていたけど、返事はNO。粘ってほだされるような親ではないので、諦めざる負えなかったのではないだろうか。

それからその猫の家をダンボールで作り、空き地の原っぱに置き、近所の子供達で構っていた。
学校に行っている間、猫が私の家の前でずっと鳴いていたと他の家から聞いたことがあった。
公園に猫を抱えて遊びに行ったり、皆で花火をしている時にも猫がいたり。
帰らなければいけない時間、猫をダンボールの家に入れて、皆で帰ろうとしたら付いてきて困った事もあったような。
里親を探そうかという話があったけど、子どもの私は嫌だと言っていた気がする。

しかし、そう時間が経たない内に、猫は突然いなくなった。
方々探したと思うが、以来二度と会っていない。


「その猫がとても感謝していて、守ってくれています」


帰りの電車で、涙ぐみながらずっと考えていた。
君の名前は何だっけと。
黒い猫だったからクロか?ミミも怪しい。


祖母に電話してみた。
「あの猫のこと覚えている?」
『あぁ覚えているよ、茶色と白の三毛猫で、白の割合の方が多かったよね。』
「え!黒猫じゃなかったっけ?」
『黒じゃなくて三毛猫だったよ!』
「そう言われるとそうだったかも・・・」


・・・記憶とは曖昧なものである。
という事で、おそらく名前はクロではないだろう。
ミミかな?
ずっと考えているけど、まだはっきり思い出せなくてごめん。
外見も、記憶違いをしていてごめん!

私は怖がり故、0関係のものはあまり信じたくないと今まで思っていたんだけど、あの猫が傍にいてくれているなら嬉しい。