口紅

  以前に書いた、アー写撮影のためという名目の化粧品集め。
また恐る恐るデパートに行ってきた。
目当てのブランドに行くも、さすが新宿伊〇丹。売り場はお客で溢れている。
店員の方に合う口紅の色を見てもらいたかったので、商品を見ながら空くのを待っていた。
ようやく一人の店員の手が空いたと思ったら、私より後に来たマダムにつく。
あぁ私はお呼びじゃないのね・・・と心が折れ、デパートを後にする。
雨も降っていたし、そのまま地下鉄に乗ろうかと思ったが、また別日に買いに行くのも面倒だと思い直し、違うデパートのそのブランド売り場に向かうことにした。

移動し、京〇百貨店に入った私はホッとした。
化粧品売り場が先のデパートに比べ、随分閑散としていたからである。
これなら店員の人も、私に声を掛けてくれるだろう。
目当ての店に行くと、他の店より混んでいたが、店員が私の所に来た。
話しかけられたら、すぐタッチアップをお願いしようと決めていた私が躊躇したのは、店員が男性だったからだ。
私の心の中で、『男の人?!恥ずかしい、どうしよう・・・』と一瞬葛藤があったが、もうこの波に乗るしかない!私はその店員にタッチアップをお願いした。
男性に近くで顔を見られ、唇に触れられるのは最初緊張したが、この方は背が低く、話し方も乙女系一歩手前で雄感をそんなに感じさせない人であったので、次第に慣れる。

私が試したかった色を塗ってもらうと、全然色が乗らず合わなかった。
希望の色味を伝えて、また塗ってもらうも何だか違う。
ピンクベージュ、色味を抑えられるような、ミルキーな・・・思いつく限りの言葉で伝え、色を選んで塗ってもらっても何だか違う。
もうこうなったら言うしかない。私は恥を忍んで言った。

「益若つ〇ささんのような唇の色がいいんです・・・」






脳内イメージ画像↑

店員さんは理解してくれ、新たな色を塗ってくれた。
わくわくしながら鏡を見る。そこに映っていたのは、ローズ色にくっきり発色したケバい唇を携える自分。

「・・・もしかして私の唇だとああいう色にはならないんですかね?」

『そうですね・・・』

恥を忍んで言った結果がこれである。
元の唇の色が濃いので、ああいった色にするのは難しいそうだ。
その後も何度も店員さんは合う色を探してくれたが、しっくりくるものがない。
仕方ないので、自ら提案し、コンシーラーで色を消してもらった後に塗ってもらうと幾分違った。

イメージとは違うけど、ここまでに何度もやり直してもらい、話を聞いてもらったことを思うと、今日はやめておきます等とはとても言えず、口紅とグロスを手に店を出た。
グロスを買う予定は全くなかったが、口紅の上に白いグロスを塗ると、私のイメージに近づくということであった(これは実際そうで、ミルキーな感じになる。白いグロスかなり良いです、女性の皆さん!)。

しかし、親身に話を聞いて下さる店員さんで良かった。
ちゃんとした接客は売上に繋がるんだな・・・と、すっからかんの財布を抱えて帰る。