憧れの三日坊主

 祖母はよく昔の話をする。
あの時はこうでね、と話す途中で、引出しから昔の日記を取り出し、事実を確認することがある。
あぁそうだったと祖母が読み上げる、中々ダイレクトに自分の感情が綴られている文は、聞いていてこちらが気まずくなるような思いをすることもあるが、おぼろげになった記憶が文の中に鮮やかに蘇っていく様子を隣で見ているのは面白い。
祖母がつけているのは連用日記で、三年か五年どちらかだったと思う。
私も祖母の真似をして日記をつけてみようかと思い、早幾月。
この10月という、日記を始めるには明らかに中途半端な時期であるが、善は急げである。
急いだ内に入らないかもしれないが、とにかく!私は三年日記を買い求め、その日の晩、日記スタートと、意気揚々ペンを走らせ、ベッドのそばに日記を置いた。
今日から寝る前に毎日日記をつけるのだ。
何も書かなければ、忘却の彼方になってしまうような出来事も、この日記に書いておけば、歳を重ねた時に、懐かしく思い出すことが出来る・・・素敵な気分で床についた。

そして、私が次に日記を開いたのは、その三日後であった。
何と、三日坊主にすらなれなかったのである。
三日分の出来事を綴るペンの走りは鈍く、最中頭に浮かぶのは、夏休み冬休みの一行日記であった。
溜めに溜めた一行日記。休みの最後、他の宿題と共に涙目で行を埋めた小学生の頃の自分。
昔と何ら変わっていない今の自分にがっくりしつつ、三日分の日記を書きあげる。


今この文章を打ちながら、その日から更に10日間は日記を開いていない事実が私に重くのしかかっている。
今日こそ、今日こそは・・・