それは激痛

 会社でトイレに行く際、狭い廊下を通ろうとすると、前から人が来た。
避けて歩こうとした瞬間、ッッツゥー!という声を出していた。
ドアのストッパー(中々鋭利にとがった金属)に足の小指をぶつけたのだ。
よろけながらトイレに向かう。
便座に座り、あぁ何やっているんだろう、と一人苦笑いをする。
それにしても痛い。気になって、アームカバーをはぐってみると、血まみれの小指が姿を現す。
少し触ると、爪がグニグニ動いている。
私は思わず、母に電話をした。
が、出ない。
どうしよう・・・!

と、思いつつ何故か冷静に写メを撮る私。
ピンぼけを許さない、意外な妥協のなさを発揮し、何度かシャッターを押す始末。
そうこうしていると、緊張がほどけたのか、痛みが増してきた。
爪は剥がれているのだろうか、それに骨折かもしれない。
とにかく病院か?
えーと、とりあえず…


「◯◯さん!ちょっといいですか?!」
片方裸足の状態でフロアに行き、女性を呼ぶ。
傷を見せ、「今ぶつけたらこうなっちゃって…!どうしたらいいですかね!?」


普通の人だったらこう言うだろう。

「え、何で私?」


しかし、優しい女性は絆創膏を持ってきて、夏だから破傷風が心配なので病院に行った方がいいよ、と言いながら貼ってくれた。
すぐ病院を探して行くことと、お礼を伝える。
最後に
「爪って剥がれても生えてくるんですかね!?」と、だから何で私に?と普通の人なら思うような事を確認すると、女性は「あ、爪は剥がれても生えてくるらしいよ」と笑顔で言っていた。
優しい女性に感謝し、会社から一番近い、ヤブと評判の病院に向かった。


結果、骨折はしておらず、爪は一部剥がれているかもしれないが、処置すると痛いのでそのまま様子見する、との事だった。
2日前には、久しぶりにディズニーランドに行き、浮かれていたのが嘘のようである。
これが、青天の霹靂というやつなのだろうかと、大げさに思いながら、診察台に載る自分の足を眺めていた。

看護師が、傷口に巻くものをどうするか医者に聞いている。
「今(私の足の下に)敷いてるやつでいいだろ、別に」と、医者が看護師に言い捨て、去って行った。

おい、雑菌とか大丈夫なのかよ・・・!
私の心の叫び虚しく、看護師はそれを巻いていた。


また明日もこの病院に行かなければならない。